からだと心にTATAMO! yoga

デザイナー、農家、畳店、みんなで考えるTATAMO! のかたち

リーフデザインパーク本多恵三郎氏

2010年9月に行われたLondon Design Festivalで展示したリーフデザインパークのブース Photo by Andrew Figueira

家具やインテリアのデザイン、アートワークを数多く手掛け、ミラノサローネなど国内外問わず数々の展示会を行ってきたリーフデザインパーク。素材そのものが持つかたちと真摯に向き合い、ていねいにデザインしてきた彼らが、日本の伝統的な素材である畳をどのようにデザインしたのだろうか。TATAMO! yoga完成までの道のりをリーフデザインパークの本多恵三郎さんに聞いた。

「最初にTATAMO!のクリエイティブディレクターである田中陽明さんから『イグサで何かつくらない?』と声をかけられました。畳という伝統的な素材を扱うことはデザイナーとして大変うれしかったです。畳は僕の生活の中で身近に感じてきた素材であり、和室が好きだったのでこの依頼を受けました」

TATAMO! プロジェクトがスタートしたかなり早い段階から本多さんもプロジェクトメンバーとして加わり、打ち合わせが行われた。その打ち合わせの場には、本多さんのほか、TATAMO! プロジェクト代表である畳店の百瀬和幸さん、イグサ農家の園田 聖さんをはじめとするプロジェクトメンバーが出席し、ともにTATAMO! らしいデザインプロダクトとは何だろうかと考え、企画を練った。
こういった素材の生産者と一からプロダクトを一緒に考えるというのは本多さんにとって貴重な体験だったという。

「これまでメーカーの担当者と話すことはありましたが、プロダクトの素材を生産している方と一緒に打ち合わせを行うのはあまりないことで、園田さんから聞くお話すべてが新鮮で、僕自身にとって大変勉強になりました。
TATAMO! プロダクトの第一弾を何にしようかとみんなで考えた時、TATAMO! には畳表という加工物がすでに素材としてあり、この素材をもとにしたプロダクトがこれからたくさん生まれる。そうなると第一弾プロダクトには耐久性が求められるものがいいだろうという話にまとまりました」

TATAMO! では、これまでイグサ農家が一般の畳表に使えないとして廃棄していた94センチ以下のイグサを使用している。国産イグサを使ったコンパクトな畳表のエコプロダクトということで、当初ランチョンマットやバスマットというアイデアもあったそうだ。しかし、TATAMO! のこれからを見つめた場合に、まずはTATAMO! の畳表の耐久性を試すようなものをつくり、そのデータをもとにプロダクトの幅を広げていくのが良いだろうという結論となり、ヨガマットの製作が決定した。

TATAMO! yogaに込められた日本伝統の所作

染色したイグサのサンプル

1:3分割したデザインパターン

TATAMO! でヨガマットを生産・販売することが決定すると、その後は園田さんに相談しながらリーフデザインパークで畳表の織り方からカラー、パターンなどのデザインを検討していく。

「最初に園田さんにサンプルとして見せていただいたのがメセキ織りの畳表でした。メセキ織りは目が細かくて比較的厚い畳表ができます。立体的で陰影がはっきりする分、浮き上がってくるような印象を受けます。園田さんに畳表を見せてもらった時からメセキ織りは表情があってすごくきれいだという印象があって、この織り方でいこうというのは全員一致でしたね」

たしかに完成したTATAMO! yogaを見てまず驚くのは、その美しい色だ。あまり知られていないが、イグサはさまざまな色に染色できる。なかには黒や赤、黄色など、一目ではイグサと気づかないほど鮮やかな色もある。こうした20色ほどの染色したイグサのサンプルの中からTATAMO! yogaに合うカラーを慎重に検討し、最終的にデザイン2パターン、全6種類のヨガマットが完成した。

「染色したイグサを使ったプロダクトはありますが、これだけ発色が鮮やかなイグサのプロダクトってないんです。プロジェクトを進めていく上でこの発色の良さはTATAMO! プロダクトのキーワードになるだろうという認識がみんなに共通してありました。
そのため、立体的なメセキ織りと鮮やかな色の美しさを活かす方法、とくにヘリの部分の色と素材については悩みましたね。
TATAMO! yogaには1:1と1:3の比率で色を分割した2種類のデザインパターンがあるのですが、これは水平と垂直を意識してデザインしています。以前、茶道を習ったことがあるんですが、畳に対して斜めに座ることは、茶道の作法としてかなりNGらしく、茶道の所作は水平・垂直に合わせて行うことが大切だそうです。そういった日本古来の所作をTATAMO! yogaにも取り入れられたらと思ってデザインしました。
あと、この比率にしたのにはもうひとつ理由があって、このマットの上でヨガを行う際に、ヨガマットの色が分かれている部分を見て、センターと体の中心だったり、頭の位置を意識したり、ポーズをする上でのひとつの目安として使ってほしいという思いもあります」

何度もリーフデザインパークはデザインについて検討と試作を繰り返した。そして、TATAMO! がもつ素材感と美しさを活かすために、ヘリの部分を3種類のリボンでふち取り、カラーバリエーションも6種類で決定。これまでにない自然素材のヨガマットが誕生した。

畳の上で美しいからだをつくる

滑り止め加工のサンプルとメセキ織りのサンプル

ヨガマットは日常的にマットの上で人が運動を繰り返すもの。やはり耐久性と使い心地が重要になる。試験場で試作品の上におもりを置いて摩擦をかけるテストのほか、実際にヨガのインストラクターによるモニターテストも実施した。

「TATAMO! yogaがマットの形になった段階で、僕もTATAMO! yogaを使ってヨガをしたんですが、気持ちよかったですよ。
僕はヨガについては素人なのでもっと詳しい感想を得るために知り合いのヨガインストラクターに協力してもらい、実際にTATAMO! yogaを使って、さまざまなポーズをとりながらその使い心地を確認してもらいました。
実際に使ってみた感想として、素足で畳の上を歩いているような気持ちよさがあり、イグサの香りも含めて通常のヨガよりリラクゼーション効果を感じたそうです。
また、改善点としては市販のヨガマットと較べて厚みがない。フローリングの上にヨガマットを敷くので滑る感覚があるという課題も寄せられました。その意見をもとに、園田さんにお願いして畳表で実現できるギリギリの厚さに調整していただきました。
TATAMO! yogaに滑り止めを接着する方法も試したのですが、自然素材を使ったプロダクトなので、なかなか良い解決策が見つからず、気になる方に向けて専用の滑り止めマットを製作しました」

TATAMO! で使用する園田さんが育てたイグサは、寺社にも使用される高品質なもので、一般の畳表より肉厚で生命力が強く、芳香性も高い。 やはり呼吸を大切に考えるヨガとTATAMO! の相性は良いようだ。
しかし、ヨガと一言に言ってもその種類は幅広く、求められる効果もさまざま。リラクゼーション効果の高いヨガのワークアウトであれば、TATAMO! yogaのもつイグサの弾力や香り、そして息吹を堪能できるのではないだろうか。

「日本国内に限らず、海外の方々にもTATAMO! yogaを使ってほしいですね。6月にPASS THE BATON表参道ヒルズ店で行われたREBIRTH PROJECTの展覧会『Trans-i+』では、REBIRTH PROJECTセレクトとしてTATAMO! yogaとfloorを展示しました。イグサ製品はいろいろありますが、こういったかたちのものはめずらしいようで、なかには素材が何なのかわからない人もいたようです。
これだけ斬新なプロダクトですから、ヨガマット以外の使い方があってもいいかもしれませんね」

日本に限定されていた畳の存在が普遍的な素材となり、用途に合わせて組み替えられながら世界を広げていく。世代も国も越えてTATAMO! yogaが受け入れられるのもそう遠くはないだろう。