TATAMO! トピック topic

国産畳のデザインプロジェクトTATAMO! はじまる

日本建築でなくてはならない素材、畳。TATAMO!では、多様化する現代のライフスタイルに合ったしなやかで柔軟な新しい畳プロダクトを提案していく。「みんなで畳もう!」の合い言葉のもと、スタートしたこのプロジェクト。その計画についてTATAMO!の発起人である百瀬和幸さんに話を聞いた。

イグサ農家と畳店とデザイナーでつくるTATAMO!

「TATAMO! floor」
エクササイズ用マット「TATAMO! yoga」

国産の畳素材を使用したデザインプロダクトの開発、販売を行うプロジェクト「TATAMO!」がはじまる。TATAMO! は、これまで長さが足りないという理由で焼却処分されていた畳の原料であるイグサを使って、イグサ農家と畳店、そしてデザイナーが連携して新しい畳素材のデザインプロダクトを生みだしていく。
現在はフローリング材やウォールパネルとして使える「TATAMO! floor」とエクササイズ用マット「TATAMO! yoga」の販売に向けて準備を進めているところだ。

今回、TATAMO! プロジェクトについて代表である百瀬和幸さんにお話を聞いた。

「TATAMO! は畳の可能性をどんどん広げていくプロジェクトです。今まで畳はこういうものだっていう固定概念がありました。その一番大きな原因はサイズだったと僕は思うんです。TATAMO! では、それを崩した。これからデザイナーさんの力を借りてさまざまなTATAMO! プロダクトが生まれる予定です。
壊しちゃってよかったのか?っていう気持ちもあるけれど、もともと捨てられていたイグサを使っているので、それを使って楽しむっていうのはありじゃないかなと、そう思ってます」

日本人でありながら意外と畳については知らないことも多いことだろう。畳というのはイグサを編んだ畳表(たたみおもて)をワラやポリエチレンフォームでできた畳床(たたみどこ)にかぶせ、鮮やかな畳べりで畳のふちを固定して縫いつける。「畳の表替え」というのは、つまり畳表を交換するということだ。そして、畳表の多くは生産者であるイグサ農家が専用の織機を使って生産している。

しかし、畳には定型のサイズ(176センチ × 88センチ / 関東間)があるため、イグサ農家では畳表を織るのにふさわしくない94センチ以下のイグサを処分しているという。
この事実はTATAMO! の基点となっている。

処分される94センチ以下のイグサ

2009年6月熊本県八代市。イグサの収穫を手伝う百瀬さん(左)とイグサ農家の園田さん(右)

TATAMO! では減農薬栽培でエコファーマー認定を受けた熊本県八代市のイグサ農家園田聖さんが生産・製作した国産畳表を使用している。
百瀬さんは6年前にイグサ産地の見学会を通じて園田さんと知り合い、意気投合したそうだ。その後、畳表製作を体験した時のできごとが強く印象に残ったらしい。

「園田さんと親しくなるなかでイグサの収穫や畳表を織ることなど、普通の畳屋では体験できないことをさせてもらいました。
ある日、畳表づくりを手伝っていると園田さんがトラックいっぱいにイグサを積んでこれから焼いてくるって言うんです。『そんなに焼いちゃうの?』と驚きました。その時に、94センチ以下のイグサを処分しているということを知ったんです。
畳屋でもこのことを知らない人は多いと思います」

市場規模でみると国産のイグサを使ったの畳表というのは、全国シェアの約20%程度。市場の中心は安い中国産が占めている。その上、イグサ生産量の25%以上は94センチに満たないという理由で処分されている。このことは以前からイグサ農家の間で問題視されていたそうだ。

TATAMO!プロジェクト始動する

長野県松本市で85年続く百瀬畳店を営む百瀬和幸さん

その後、百瀬さんは松本市で参加したセミナーでその時の体験を思い出す。

「農商工連携のセミナーにたまたま参加したんです。そのなかで未利用のものを扱う計画が好まれると聞いて、その瞬間に焼却処分されていたイグサのことを思い出したんです。このことを園田さんに相談したら『おもしろい、やろう』と言ってくれた」

こうして農林漁業者と商工業者が協力して新商品や新サービスの開発などを行うのを支援する、経済産業省と農林水産省が進める施策「農商工連携」に申請することになった。
さらに百瀬さんはもう一人、知人の紹介で知り合ったという春蒔プロジェクト(株)代表取締役兼クリエイティブディレクターの田中陽明さんに会いにいく。

「最初は小さくて組み合わせは自由で模様もつくれるという小さな畳をつくろうと考えていて、それをうまく表現するためにはデザイン力しかないなって思ってました。そのジョイント部分のデザインについて田中さんに相談するつもりだったんですが、田中さんと話すうちに自然とブランディングをお願いしようという流れになりました」

こうして田中さんがプロジェクト全体のクリエイティブディレクションを担当することとなった。

安全・高品質な国産畳表にふれてほしい

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畳離れは若い世代だけでなく、段差をなくしてバリアフリーに、寝室にベッドを置くためにと、高齢者の間でも広がっているという。百瀬さんに畳店経営者として考える畳の良さについて聞いてみた。

「天然素材ならではの肌にふれた感触や香りなどが畳のすばらしさだと思います。イグサ独特の肌ざわりは何ものにも替えられないもの。
だからこのプロジェクトを進めていくには、園田さんの素材がなにより大切。僕はそう思ってます。
園田さんのつくる畳表はツヤがちがう。イグサが輝いてますね」

畳店を経営している百瀬さんをうならせるほどの畳表。TATAMO! では、その国産畳表をふんだんに使用していく。

「僕が畳屋をやっていて一番悲しいのが、畳がスレたり傷んできたからしょうがなく替えるという依頼です。そうじゃなくて自らこうありたいと思って畳を替えてほしい。
たとえば、TATAMO! yoga購入者がTATAMO! yogaを使ううちに畳を身近に感じるようになる。そして、少しずつ日常生活にTATAMO!プロダクトが増えて、畳に対する意識が変わっていく。そういうきっかけにTATAMO! がなってくれればいいなと思っています」